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方向を揃えることが鋼旋削加工プロセスに与える影響について

新しいGC4415およびGC4425チップは、信頼のおける性能および優れた摩耗耐性を発揮します。

方向を揃えることが鋼旋削加工プロセスに与える影響について

古代ローマの戦争戦略とサンドビック・コロマントの鋼材 (ISO P) 旋削材種の共通点は何でしょうか?その共通点は、加工工場の生産量を増やすことをどのようにしてサポートできるのでしょうか?以下では、金属加工の世界的リーダーであるサンドビック・コロマントのプロダクトマネージャー、ロルフ・オロフソンが、超硬材種のコーティングおよび母材が、どのようにして鋼旋削加工プロセスの効率および生産性の大幅な改善もたらすかについて、説明しています。

鋼の加工は簡単である、というのは金属加工業において一般的な誤解です。経験を積んだ機械工は、鋼材 (ISO P) 旋削加工は決して単純でないことを知っています。多くの問題点の中でも第一に、鋼材 (ISO P) に分類される被削材は、延性低炭素鋼から高合金鋼まで広範にわたる、ということが挙げられます。

第二点は、様々な鋼材の硬度範囲が、スペクトルの端から端まで及ぶほど非常に幅広いことです。加工の種類は様々で、工場における加工条件も様々です。

鋼旋削加工は課題が多く、様々な変数を考慮しなければならないものであることは明らかです。鋼材 (ISO P) が示す幅広い特性に対処するための材種を選定するという仕事は、さらに難しいものです。

​万能材種
どの万能材種にとっても、耐破壊性が一番重要な特性です。なぜなら、刃先は、刃先に生じる非常に高い温度によってもたらされる塑性変形に耐えるために必要な硬度を提供できなければならないからです。

さらに、材種は、逃げ面摩耗、クレーター摩耗および構成刃先を防ぐことができるコーティングが施されていなければなりません。重要なことは、コーティングが母材にも粘着していなければならないことです。コーティングが粘着していないと、母材が露出し、早期に不具合が発生します。

これら一連の要件のため、加工用に一つの材種を選定する際、十分な情報を得た上で決定するためには、鋼旋削加工用材種の構造を理解することが非常に重要です。

超硬チップの構造
すべての材種は、母材として知られている超硬チップコアを含んでいます。母材により、材種のじん性および強度が決まります。塑性変形への耐性もまた、材種の属性です。

超硬チップ母材は通常、チップに刃先のじん性、耐溶着性および耐摩耗性特性をもたらす、炭窒化チタン (TiCN)、アルミナ (Al2O3)、窒化チタン (TiN) 等のコーティング層でカバーされています。逃げ面摩耗やすくい面摩耗といった様々な種類の摩耗および構成刃先に対する耐性、 母材への溶着および良好な工具寿命は、コーティング層の設計に関する顕微鏡レベルの詳細にその秘訣があります。

ローマ軍の盾の壁
図1aに示されているように、従来のアルミナコーティングでは、結晶成長方位はランダムです。図1bで黄色で示されているように、コーティング層中の成長が、すべての結晶が同一方向に揃うように制御できるのであれば、優れた耐摩耗性が発揮されます。

結晶の方向を揃えることの威力を理解しやすくするために、ローマの歴史からの例を見てみましょう。古代のローマ軍が包囲攻撃を行った時、しばしば盾の壁 (亀甲形の大盾フォーメーション) を展開しました 。このフォーメーションでは、すべての盾は脆弱なギャップを回避するために、単一方向に揃って密集していました。ローマ軍が前進する際、盾の壁は迫り来る攻撃への抵抗に役立ちました。コーティング層における結晶の方向を揃えることも、同様の方法で機能します。単一方向に揃って密集した結晶は盾のように作用して、刃先の厳しい加工条件に対する良好な耐性を実現します。

単一方位結晶
サンドビック・コロマントの研究開発エキスパートは、剛性の最も高い部分をチップ表面に向けてすべての結晶を同一方向に揃えるために、アルミなコーティングにおける結晶の成長を制御する方法を見つけ出しました。Inveio® (インヴェイオ) コーティングとして知られているこの特許取得済みの技術により、チップの耐摩耗性と工具寿命が新たなレベルに高められました。

単一方向に揃って密集した結晶は、切削領域と切りくずに対する強力なバリアを形成します。これが、Inveio® (インヴェイオ) を備えた材種のクレーター摩耗および逃げ面摩耗への耐性を大幅に向上させます。もうひとつの期待される影響は、切削領域から迅速に熱が除去されることにより、長時間にわたり切れ刃形状が維持されることです。これらすべてが相俟って、寿命の長い安定した工具が実現されるのです。

サンドビック・コロマントの最新の鋼旋削加工用材種GC4415およびGC4425の特徴である第2世代Inveio® (インヴェイオ) テクノロジーにより、単一結晶方位のメリットがさらに強化されています。改善された結晶成長方位が、さらに安定したパフォーマンスと耐摩耗性の大幅な向上を実現しています。

断続加工
チップ材種、つまり母材およびコーティングを選定するための最初の2つの留意事項を検討しましたので、今度は3つ目のポイント、断続加工中の性能について簡単に見てみましょう。どのような突発的なチップ破損も回避するのを助けるので、これは重要な要件です。

ポストトリートメント、すなわち、非常に細かで、鋭利なセラミック粒子がチップコーティングへ噴射されるプロセスが施されたチップを見てみましょう。さらなる強度を得るためにコーティングをハンマーでたたくことを想像してください。効果的なポストトリートメントを施したチップは、断続加工を見事にこなします。

新しいGC4415およびGC4425材種
サンドビック・コロマントは、最近2つの新しい鋼材 (ISO P) 旋削チップ材種を市場導入しました。材種GC4415およびGC4425は、大量量産およびロット生産セットアップで操業している製造業者に理想的です。

Inveio® (インヴェイオ) テクノロジーにより強化された心臓部に新しい母材を備えた2つの材種は、信頼のおける性能および優れた摩耗耐性を発揮します。加えて、材種の新しいポストトリートメントが断続加工における性能を改善し、突然のチップ破損を回避し、広範な用途において両チップ材種に優れた性能を発揮させることが明らかになりました。

これらの材種により、より高い切削速度 (vc) と送り速度 (fn) を適用できるようになりました。一般機械産業のあるお客様は、4140焼き入れ鋼製ワークの多方向外径荒加工にGC4425チップを使用しました。このお客様は、同一の加工に競合他社のISOチップを使用した場合と比較して、100%の生産性向上、50%のサイクルタイム短縮、そして30%のコスト削減を達成されました。

鋼材 (ISO P) の加工には注意が必要です。材種を選定する際に、母材のじん性、および材料科学およびツーリング技術の分野における新しい技術進歩などの2、3の留意事項を頭に入れておくことによって、鋼旋削加工の効率性と加工工場全体の生産性を大幅に改善することができます。​

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